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最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)218号 判決 1965年3月19日

上告人

峠博子

右訴訟代理人

豊秀夫

被上告人

東フミ

右訴訟代理人

久保田源一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

民法三八八条但書の規定は、同条により当事者間に成立したものとみなさるる地上権については、地上権成立と同時に地上権者に地代支払義務の発生することを前提として、その地代額について当事者間に協議のととのわないときは、当事者の請求によつて、裁判所が、ただその地代の額を定めるにすぎないのである(大審院大正五年(オ)五六六号・同年九月二〇日判決・民録三二輯二八巻一八一三頁、同昭和一四年(オ)八六七号同一四年一一月二五日判決・民集一八巻二二号一四六頁各参照)。すなわち、右当事者間において、すでに地上権という基本的権利義務関係が発生しているのであつて、その当事者の請求により、裁判所は、その権利義務関係の一内容である地代の数額を決定するにすぎないのである。それゆえ、同条の規定による地代確定請求事件における第一審判決が言い渡されている以上、右判決がまだ確定していなくても、右地代の額は客観的に一応定まつているものと解しえないわけでないから、このような地代債権をもつて民訴法六〇一条にいう券面額がないものということはいえない。

したがつて、転付命令が債務者および第三債務者に対し送達された当時、法定地上権の地代確定請求事件の第一審判決が言い渡されている以上、右判決が確定していなくても、第一審判決において認められた地代の額の範囲内において、右地代債権に対する転付命令は無効とはいえないとした原判決の判断は、当審も正当として是認しえないわけではない(そして、右第一審判決に対する上訴審において、右地代の額が減額されたようなときには、転付命令の効力が、その限度においてこれに即応した法的効果を考慮すれば足りるとの原判決の判断も相当として是認しうる。

原判決には、所論のような違法ありといいがたく、所論は、採用しがたい。

同第二点について。

強制競売のときにおいても、賃貸借の賃借人から賃貸人に交付されている敷金関係は、特段の事情のないかぎり、競落人たる新賃貸人に承継されると解するのが相当であつて、この点についての所論は、独自の見解として排斥を免れず、その余の論旨は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨選択、事実の認定を非難するに帰し、採用することができない(上告人所論の主張事実を認定しがたいとした原判決の判断は、原判決挙示の証拠により、当審も、正当として是認できる。)。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条により、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

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